「俺らしくない?」
「うん」
「そっか、でも。ごめん」
「ふふっ。良いよ。それより、どこ、行きたい?」
「へ?」
「私、迷ってたんだよ。どこ行くか」
「…あ」

 くすくすと笑ってるその顔が可愛すぎてどうしよう。
 いや、ここじゃどうにも出来ないんですけど。とりあえず、人気ないところだったら確実にキスしてます。
 ごめんなさい、俺、こういう人間。

「ねぇ?」
「何?」
「巧くんはないの?欲しいものとかー、行きたい所とか。付き合ってもらってばっかりだったし。今度は私が付き合うよ」
「うーん、そうだなぁ…」

 本当は、君が欲しいんです。
 君の全てが欲しいです。
 でも、まだまだそんなことサラッと言えません。

「…本屋、行こうよ。行きたいんでしょ?俺も見たい本あるし」

 一応、話、聞いてるつもりです。
 ただ、肝心なところでヘマをするのが俺なんです。

「うん、じゃあ、そうしよ」

 にっこり微笑む君の笑顔が眩しすぎて。
 ほら!またどこかの誰かが君を狙ってる!

「巧くん?」
「え?あ、ごめんごめん」

 あぁ、こういう時に少しでも『彼ら』のような『威圧感』を持っていたならなって思うんだ。

 まぁ、でも。俺らしく、ないよね。

「奏ちゃん」
「なぁに?」
「俺のこと、好き?」
「え、えぇ?!」

 にっこり笑って聞いたら、慌てた君。
 あぁ、顔が真っ赤だ。
 大丈夫、答えなくてもわかってる。
 俺が考えてる通りでしょ?

「き、急にどうしたの?」


 慌てふためく君を見て嬉しくなる俺はおかしいでしょうか?


「だって、俺は奏ちゃんのこと大好きなんだもん」


 まだ、これだけで良い。まだ、ね。
 でも、いつかは
 きみのすべてを
 僕がもらいます。


―Fin―


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