「では、こちらで…。それと、こちらを」

 要は蓮を客室へ通すと、部屋に置いてあった少し大きな荷物を蓮に渡した。

「もう…決まっていたんですか」
「え、えぇ…みなさまからのたっての希望でございます」
「その…」
「はい?」

 いつかの修一のように歯切れ悪く話をする要に、蓮は少し小声で話しかけた。

「…もしかして、要さんも、やるんですか?」
「…えぇ。今回は…私共も、と」
「ていうことは?」
「西園寺家の頭首である慎太郎様のご提案で…その…ご子息、ご令嬢、ご招待されたお客様方は勿論ですが、私や同じく執事の柊、そして、この家に仕える者たち全て、です」
「…」
「…」

「「…」」

「は、はは…」
「そ、それでは、私もこれで」
「あ、はい…では、その…後で」

 そう言葉を残すと、要はいつもの執事の顔に戻り一礼をして去って行った。
 一人残された蓮はその荷物に目をやり、一つ溜め息をつく。

「まぁ…きっと楽しいことには違う無いだろうし」

 そして、その荷物を手に奥へと入っていったのだった。

 一抹の不安を抱えながら…。


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