夕食が終わり、各々が眠りにつくまでの時間を自由に過ごしている頃。
 思ったよりも早く終わった仕事を机に並べ、掛けてある時計に目をやった。
 やっぱり、何度見てもいつもよりも早い時間だ。

「今日は早めに見回りをしておこうか」

 もう明らかに使わない時間であろう部屋の戸締りくらいはしても大丈夫だろう。
 そう思って執事室を開けた。

 少し静かな廊下を一人歩く。いつもはあまり感じない自分の靴音がやけに大きく聞こえた。

「お、要。今日はもう見回りか?」

 暫く歩いたところで、サッカーボールを持った彼に出会う。

「雅弥様こそ、こんな遅くまで練習を?」
「あぁ。もうすぐ試合も近いから」

 サッカーボールを見つめながら話す彼の目は、ひときわ輝いて見えた。

「しかし、あまりご無理はなさいませんよう」
「わかってるって!大丈夫大丈夫!」
「それと」
「あ?」

 ニカッと笑う彼に、いつもの笑顔でこう告げた。

「数学の宿題が、出ているのではありませんでしたか?奏様は慌てていらっしゃいましたが」
「…やっべ!そうだった。さんきゅ、要!急いでやってくる!」

 その笑顔はあっという間に焦り顔。慌ててサッカーボールを抱えると廊下をいつもの調子で走っていく。

「雅弥様!廊下を走っては…」
「わりぃ!でも、今だけは見逃してくれー!」
「…やれやれ」

 今日は、二度目…か。

 そう思いながら、窓の外をそっと眺める。
 遠くに丸くなりかけている月が一つ。
 明日か明後日には満月になるんだろう。
 そうしたら、瞬様あたりが月光浴と言って夜の散歩に出かけそうだな。

 そして、また一人歩き出した。


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