【奏side】

 なんだろう。
 なんか、違和感。

 私は本を片手に持ちながら、廊下をゆっくりと歩いていた。
 少しだけ考え事をしながら。

「雅季くんと瞬くん…なんか様子がおかしい気がするんだよなぁ…」

 ぼそっと呟いたその言葉は誰の耳にも届かない。

 そうそう。あと、他のみんなの様子も…どこかおかしい気がするんだよね。
 そわそわしてるような。特に、裕次お兄ちゃんと雅弥くん。

 一体、どうしたんだろう?

 私が向かった先は書斎。
 宿題の資料として本を借りていたから、それを返しに来たのだけれど…。

「あれ?ドア、開いてる。誰かいるのかな?」

 そして、そっとドアを開くと…

「あ、瞬くんだ。…あれ?雅季くんもいる。何か話してるけれど、今…入っても平気かな?」

 二人は何か話しているようだけれど…何を話しているのかは遠くて聞こえない。


「珍しいね、瞬が書斎にいるなんて」
「そう、かな?でも、そうだよね。雅季兄ちゃんはいつもいるから良くわかってるよね」
「でも、そんなに長くはいないよ」
「そうなの?」
「うん」

 何、話してるのかなぁ?入っても大丈夫、かな?

「…ねぇ、雅季兄ちゃん」
「どうした?瞬」
「雅季兄ちゃんはさ、奏お姉ちゃんのこと、どう思ってるの?」
「…どういうこと?」

 あれ?なんかやっぱり…まずいかな?
 会話がわかれば入りやすいけれど…でも聞くわけにも行かないよね、やっぱり。

「僕は、好きなんだ」
「…!」
「雅季兄ちゃんが何も思ってないなら、僕…動くけど、構わないよね?」
「…」
「…」
「そう、来たか」
「やっぱり、そうなんだ?」
「否定はしないよ」
「でも、雅季兄ちゃんも気づいてたんだ?」
「なんとなく、ね。なんだかんだ、瞬は似てるところがあるから、僕と」
「うん、僕もそう思う」

 うーん。真剣な話っぽいんだよなぁ。
 …って!!

 バサッ

「きゃっ!」

「「誰!?」」

 二人のことが気になるあまり、うっかり手に持っていた本を落としてしまった。
 二人はほぼ同時にこちらを向くと、少しだけ赤い顔をした。

「へ?ど、どうしたの?って、そうだ!ごめん、何か話してたよね、二人とも。邪魔しちゃった」

 慌てて本を取って二人に謝る。
 二人は顔を見合わせて少しだけ笑った後、ほぼ同時に「大丈夫」と言ってくれた。

「それより、どうしたの?奏お姉ちゃん」
「え?あ、宿題で使った本を返しに来たの」
「ふぅん。それで、宿題出来たの?」
「うん、でもあとちょっと…」
「そう。じゃあ、それなら…」
「ねぇ、奏お姉ちゃん?」
「え?え?」
「…瞬」
「言ったでしょ?雅季兄ちゃん」

 雅季くんが話をしていたと思ったら、急に瞬くんが話し掛けてくる。
 そして、今度は黙って二人見詰め合っていた。

「ど、どうしたの?」

「「なんでもないよ」」


 この二人の闘いは…まだ始まったばかりだった。



「なぁなぁなぁなぁ!俺、見ちまった!とんでもねぇもん!」
「な、雅弥、どうしたんだよ?」
「とりあえず、落ち着いて下さい」
「どうなさったんですか?雅弥様」
「今…書斎に雅季と瞬と、それに奏がいるんだよ!」

「「えー!!」」


 そして、こちらはこちらでヒートアップするばかり…。


 この恋の結末は、どこいずこ?


―Fin―


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