【雅季side】
最近、気になってることがあった。
それは、奏のこと。
そして…瞬のこと。
僕は気づけば、彼女に惹かれていたのだけれど…。最近気づいてしまったことがある。
瞬もまた、彼女に惹かれているんじゃないかって。
それは僕の勘でしかないんだけれど。
意外と…当たるんだよな、こういうのって。
なんて…僕らしくもない。
「雅季くん!」
「何?奏」
それは放課後のこと。
つい、素気なく返してしまう自分の返事。自分のことなのに…素直になれないところがなんか疎ましい。
「あの、今日の帰りなんだけれど。ごめんね、今日は一緒に帰れないや」
…?
なんで?
自分の顔が変わったことがすぐにわかったのか、彼女はすぐに言葉を続ける。
「今朝ね、瞬くんが一緒に帰ろうって誘ってくれて。今日、雅季くんは生徒会あるでしょう?」
「あ、あぁ…」
なんでよりによって…瞬なわけ?
「それじゃあ!生徒会のお仕事、頑張ってね」
「え?あ、うん…」
そう言うと彼女は足早に去っていく。
そのまま、瞬の所へ行くのかと思うと…ちょっと癪。
別に瞬が嫌いなわけじゃない。
これはただの嫉妬。
「雅季?どうかした?」
気づけば傍に居た巧。
「なんで?」
くいっと眼鏡を直して彼の方へと向き直る。
「なんか、すごい不機嫌そうな顔してるよ?」
「…気のせいじゃない?それより、行くよ。生徒会室」
「え!?あ、ちょっと待ってよ!雅季!」
ねぇ、巧。
僕はそんなに不機嫌そうな顔をしていたわけ?
それはちょっと、心外。
「…なぁ、修兄。見た?」
「見て…しまいましたね」
「ついでに、聞こえた?」
「えぇ、聞こえてしまいました」
「巧、ちょっと哀れかも。きっと少し…当てられるぜ」
「それは…ご愁傷様というしか」
「修兄…」
「にしても。瞬が先手を打ってきましたか」
「多分、瞬もわかってんだろうな。雅季もだろうけれど」
「…やれやれ。困ったものですね」
「ははは…」
そんな会話を…二人が廊下でしていたなんてことにも気づかなかったなんて。
僕、一体どうしたんだろう。
彼女のこととなると、なんか調子狂う。
それよりも。この気持ちのやり場、どうにかしたい。
…今日は一人、か。
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