【奏side】
「…本当に?」
「俺は絶対そうだと思うんだよ。雅季のやつ」
「実は…僕も最近気になっていたんです」
「修一兄さんもなの?」
「瞬様は見ていて…とても変わられたように思いますが…」
「えぇ、要さんも!?」
「気づいてなかったの、裕兄くらいじゃねぇの?」
それは居間から聞こえてきた声だ。
少しだけ空いたドアから見えたのは…修一お兄ちゃん、裕次お兄ちゃん、雅弥くん、それに御堂さん。
何の話をしているのかは全然聞こえないんだけれど…。
四人で円を作るようにして立ち話をしていた。
「あの二人のことじゃ…お互いのことはもう…?」
「わかってるかもしれないですね」
「うわ、それって結構…」
「…すごい状況、かもしれないですね」
ぼそぼそと聞こえて来る声。
だけれど、その単語ははっきりとは聞こえなくて。
「みんな、何話してるの?何かあった?」
きぃっとドアを開けて声を掛ける。
すると四人はびくっとした表情をしてこちらを一斉に見た。
「え!?ど、どうしたの!?」
「奏!お前なぁ、急に声掛けんじゃねぇよ!」
「び、ビックリしたぁ…」
驚いたのか、雅弥くんはちょっと声が裏返っていて。裕次お兄ちゃんは胸をなでおろしている。
最初は驚いていたのだけれど、修一お兄ちゃんと御堂さんはすぐにふわりと優しい笑顔を見せてくれた。
「お嬢様、大丈夫です。心配なさることは一切ございませんよ。お気遣いありがとうございます」
「本当に、大丈夫ですから」
そう言われると…それ以上は何も聞けないや。
「それなら、良いんだ。じゃあね?」
「お、おう!」
「またあとでね」
結局…なんだったんだろう?
居間のドアをパタンと閉めて、私は廊下をゆっくりと歩いていった。
「あっぶねぇ…まさか奏が通るとは思わなかった」
「全くですね…油断していました」
「ホントホント!気をつけて話さなくちゃね」
「お嬢様もですが…あのお二人も…鋭いですからね。
「「確かに」」
そんな話をしているなんて、私は思いもしなかった。
「でも…」
「…だよなぁ」
「そうですよね」
「雅季も瞬くんも、奏ちゃんのことが好きなんじゃないかなんて話…出来るわけないよね」
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