学校でも、奏の周りには必ず誰かしら居た。
その様子を…同じクラスの僕は涼しい顔をして見ている。
本当は、気になって仕方ないくせにね。
「…季。雅季ってば」
「え?あぁ、巧か」
「ちょっとー。ボーッとし過ぎ。何考えてたの?奏ちゃん?」
「なんで僕が…」
不意に声を掛けられた上、あまりに図星の答えに思わず目を逸らす。
そんな様子を巧はさぞおかしそうに見ていたに違いない。
「…それで、何?」
「まぁまぁ!そんなに怒らないでよ。あのさ、今日の放課後の生徒会の仕事。ちょっと行くの遅くなりそうなんだ。部活の大事なミーティングがあってさ。それだけはしっかり顔出したくて」
「そ。わかった」
「よろしく。…ってあれ?」
「今度は何?」
「いや、今奏ちゃんがこっち見てた気がしたから」
その言葉に思わずドキッとする。
「気の…せいじゃないの?」
「そっかなぁ。でも、そうだったらいいのに」
今度は違った意味で心臓が跳ねる。
ねぇ、巧…それは、どういうこと?
「ねぇ、雅季。奏ちゃんって彼氏とかいないの?」
「そんなこと、知るわけないじゃない」
「まぁ、そっかぁ。でも奏ちゃんって可愛いもんな。兄としては、心配?」
「別に…」
『兄として』じゃなくて、『男として』は少しだけ心配。
そんなことを思ってるだなんて巧は思いもせず、淡々と何か話を続けていたのだけれど。
僕はあまり話が耳に入ってこなかった。
多分…彼女のことが気になったから。
ねぇ、奏?
もしも、こっちを見ていたのなら。
見ていたのは…僕?それとも…巧?
今まではこんなこと、なかったはずだ。
でも、どうしてだろう。こんなにも乱される自分のペース。
それはやっぱり、君が…好きだから?
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