【Side 雅季】

「あれ?どうかしましたか、雅季」
 物憂げに廊下を歩いていたからだろうか…。僕としたことが、兄弟に気づかれるなんて。
 でも仕方ないか…相手は修一兄さんだから。
「別に…」
「考え事をしているようでしたが。それとも誰かお探しですか?」
 どこか心配そうに微笑む彼の顔に、心臓がどきっと音を立てる。

 ちょっと…言いづらい。

 少し目を逸らして黙っていると、修一兄さんはふっと笑ってこう告げた。
「…奏さんをお探しですか?」
「…」
 図星の答えにますます何も言えない。
 彼女を探しているって素直に言えれば…どれだけ楽になるだろう。
「奏さんなら、眉間に皺を寄せたまま出掛けていきましたよ?」
「え?眉間に…?」
 その言葉に思わず顔を上げると、そこには笑っている修一兄さんの顔。
 ばっちり目が合い、なんだか恥ずかしくなる。
「今日はさっぱり二人でいるところを見ないと思ったら。喧嘩でもしたんですか?」
 やっぱりその顔は心配そうで。
「雅季」
「な、何?」
「謝るタイミングを逃しては、いけないよ」
「べ、別に僕は…」
「ふふっ、そうですか」
 そう告げると、また一つ笑い顔を作って修一兄さんは歩いていった。

 そもそも…喧嘩っていうか…一方的に奏が…

 じゃ、ないよ…な。
 確かに僕も悪かったし。

「全く、なんで外へなんか…」
 ブツブツ言いながらも、玄関へと走っていった僕。
 その後姿を修一兄さんが見ていたのも知らずに。

「全く…素直じゃないな」


|

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -