君は、必ず…要さんの淹れてくれる紅茶に角砂糖を一つだけ入れるんだ。
俺、知ってるよ?君のこと…いつも見てるからね。
「どうかした?裕次お兄ちゃん」
可愛い瞳をこちらに向けて。奏が不思議そうに訪ねてくる。
「え?あぁ、奏はいつも角砂糖を一つだけ入れるなぁって」
ニコニコしながら返事を返すと、奏は少し恥ずかしそうにする。
そんなやり取りを要さんは微笑ましそうに見ていた。
「それでは…何かございましたら、お呼び下さいませ」
要さんはそう言うと一礼してその場を離れていった。
その姿を見届けから、もう一度奏の方を見る。
「そんなところも知っていたのね、裕次お兄ちゃんは」
「勿論!だって、奏のことだからね」
そう言ってウインクをしてみせる。
その仕草のせいか、その言葉のせいか。奏はまた赤い顔をした。
「あと…」
「え?」
「今は…お兄ちゃんじゃないでしょう?」
白のテーブルと椅子が眩しいテラスに設けた席。
そこには今は…二人だけ。
「なんか…まだ慣れないなぁ」
そう言う奏の顔はなかなか赤から戻らなそう。
「ふふっ。ねぇ?名前で呼んでよ?」
隣に座る奏の顔を覗き込みながら言ってみる。
ごめんね、俺は照れてる君の顔も好きなんだ。
じっと見つめていると、少し恥ずかしそうに俯きながら小さな声で
「…裕次?」
と言ってくれた。
「なぁに?奏?」
その言葉に、その声に嬉しくなって…ついそっと彼女の額にキスを落とす。
「ゆ、裕次…!誰かいたら…」
「大丈夫、誰もいないよ?」
「…恥ずかしいよ…」
「俺は、嬉しいな?」
普段はふわふわ笑う彼女の顔も、今は真っ赤な薔薇色。
「さ、食べようか?」
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