「…お兄ちゃん…裕次お兄ちゃんー?」
まどろみの中、呼ぶ声がする…。
あれ?この声…。なんで?
「裕次お兄ちゃん!起きてー!」
ぱっと目を開ける。そこにはなぜか奏ちゃんの姿があった。
「あ、やっと起きた。夕飯の時間だって」
「もうそんな時間…?」
だるい身体を起こして時計に目をやる。
「ノックしても返事が無かったから勝手に入っちゃった。ごめんね」
申し訳なさそうに言う彼女。いや、問題ないよ。だって、寝起きに大好きな君を見れたんだから。
「裕次お兄ちゃん?まだ頭ぼーっとしてる?」
返事をしない自分にちょっと心配そうな顔をする彼女。そんな姿がすごく愛しく思えてきて…自分の中で我慢が出来なくなった。
彼女の腕を取るとぐっと引き寄せて抱きしめる。
「裕次お兄ちゃん!?」
もちろん驚く彼女。いつもとは違ったから…余計に驚いたかもしれない。
「どうしたの…?」
耳元で優しく響く声に、心の中に積もっていた想いが一気に溢れ出す。
「…ねぇ。奏?」
「何?」
いつもと違う様子の俺に彼女は身体をかたくしていた。
そんな彼女の身体を少し離すと目を見て真剣に告げる。今まで言えなかった言葉を。
「俺のこと、どう思ってる?」
「え!?急にどうしたの?裕次お兄ちゃん…?」
困惑の色を隠せない彼女。そんなの当たり前だ。急にこんなことを言われているんだから。
「俺ね、奏のこと…好きなんだ」
「…裕次お兄ちゃん?」
「なんでもないことなのに…今、何してるのかなとか、誰といるのかなとか…色々気になっちゃうんだ。気づいたら、そう思うようになってて…。なんだか独占欲みたいで、でもそう思う自分もなんだか嫌で…。ごめん、こんなこと言って…」
言っていてなんだか申し訳ないような恥ずかしいような、そんな気持ちになって俯く。彼女は黙って聞いていた。
俺が言い終わった頃、彼女は一つ息をついた。
こんなことを言った自分に幻滅したんだろうか…。
「ねえ?」
「…何?」
「それ、全部本当の…こと?」
「こんなこと、嘘でなんて言わないよ」
そう言いながらふっと顔を上げる。
するとそこには…少し赤い顔をした彼女の笑顔があった。
「ありがとう、裕次お兄ちゃん」
「え?」
「あのね…私も…裕次お兄ちゃんのこと好き、だから」
確かに聞こえた言葉は…嘘や夢じゃないよね?
「本当に?」
「こんなこと、嘘でなんて言わないよ」
聞き返すと、さっき自分が言った言葉をそのまま返される。
暫く奏の顔を見て、だんだんと頭で理解していく。わかったころにはさっきよりもきつく彼女を抱きしめていた。
「嬉しい…」
「私もだよ。でも、裕次お兄ちゃん、そんなこと思ってたんだね」
「だって、奏のこと好きだから」
そう言いながら笑い合う。
ねえ、わかってる?
君と出会って世界が変わって、
今また俺の世界が変わったんだよ?
「奏?」
「うん?」
「…キス、していい?」
「…うん」
ほら。ね。
世界にまた幸せな色が増えたんだ。
ずっとずっと大好きだよ。
君と出会って、わかったこと。
ほら、
それはやっぱり
恋だった。
―Fin―
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