裕次お兄ちゃんが部屋に戻っていった後、私はもらった可愛らしい手紙の封を開けた。
 裕次お兄ちゃんの一生懸命書いたであろう文字の列。これだけでも、充分嬉しい誕生日プレゼントに感じた。

 だけれど。嬉しかったのは…もちろん、その内容。

 朝起きてからは「おめでとう」の嵐。人生で一番「おめでとう」を言われた日かもしれないと思った。
 あと、食堂で朝食を取る時に修一お兄ちゃんに
「…今日のパーティーの後は、裕次とデートですか?」
 と笑顔で聞いてきた。なんで知ってるの!?って聞き返そうとした瞬間、裕次お兄ちゃんが真っ赤な顔をして修一お兄ちゃんの口を塞いだもんだから、なんて言おうとしたのかわからなかったけれど…それは後で雅弥くんの口から聞くことになった。
「―…ってことが、この間あったんだよ。その時の兄貴の声と顔。笑えたぜ?」
 雅弥くんはこっそりと耳打ちするように言ったから、裕次お兄ちゃんはわからなかったみたい。
 そんな様子を御堂さんがくすくす笑いながら見ていた。雅弥くんが言うには御堂さんもその場にいたらしいから、きっとこの光景が面白く感じたんだろうなぁ…。
 そんなこんなで、裕次お兄ちゃんは朝食中、終始真っ赤な顔をしていた。
 その後、学校へ行き、帰ってきてからバースデーパーティーが開かれ…。
 そして、裕次お兄ちゃんとのデートの時間になった。

 …コンコン…コンコン

 いつもの合図が部屋中に響き渡る。
 「はぁい」と返事をして、私は部屋を出た。

 きっと、ずーっと忘れない…私の素敵な誕生日。


*****+*****+*****+*****


“親愛なる奏様へ

 まずは、お誕生日おめでとう!
 奏ちゃんの大事な日をお祝いできるなんて、本当に嬉しく感じるよ。
 あのね。色々考えたんだけれど、やっぱり2人きりでお祝いしたいなぁって思ったんだ。
 そこで!少し短い時間になっちゃうかもしれないけれど、やっぱりね、奏ちゃんをデートに誘うことにしました。
 俺のプランはこうです!
 まず、この手紙を奏ちゃんに渡しに行くんだ。
 それで、一緒に誕生日になる瞬間を過ごして…一番最初に「おめでとう」を言う。
 それでそれで奏ちゃんに…っと、これは恥ずかしいからやっぱり書かない。
 その後、1日を過ごして、バースデーパーティーをしてお祝いして…。
 デートはね、この後からなのだ!
 パーティーが終わったら、迎えに行くから部屋で待っていて下さい。
 どこに行くかは…その時までお楽しみ。楽しみにしててね!
 そしたらね、
 誕生日終わるまでずーっと俺の独り占めさせて。
 そう!
 一番最初と一番最後に「おめでとう」を言うのは俺でありたいんだ。
 いいかな?
 じゃあ、そういうことだから!よろしくね。

 最後に。

 奏、誕生日おめでとう。
 大好きだよ。

 裕次より”


―Fin―


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