続・お兄ちゃんと弟
「〜♪♪」
「裕次兄ちゃん…楽しそうだね」
鼻歌を歌いながら上機嫌で運転をする裕次に、助手席に座っていた瞬がカクンと首を傾げながら呟く。
「そりゃあ、当たり前だよ!瞬くん!」
「?」
「だって、瞬くんと出掛けられるんだよ?俺、嬉しくて堪らないよ」
にっこりと笑う裕次を見て、瞬は少し顔を赤くしながら申し訳なさそうな顔をした。
「うん?どうかした?」
「う、ううん…なんでもないよ」
裕次兄ちゃん…本当に嬉しいんだ。
嬉しいような、くすぐったいような感覚に、思わずもじもじとしてしまう瞬。
「ねぇ、瞬くん」
「何?」
「これからどこ行こう?」
「そうだね…」
うーんと悩む瞬に裕次はくすっと笑いながらこう言った。
「画材屋さんに行こうか?」
「…え?」
その言葉に瞬は驚く。
「最近、ずっと絵描いてたろ?なくなったのとかあるんじゃない?」
「確かにそうだけれど…」
「じゃあ、決定!まずはそこに行こう」
明るい声でそう言うと、裕次はまた鼻歌を歌い始める。
そんな裕次を見て、瞬は裕次にわからないように…満面の笑みを見せる。
この笑顔を見せるのは最後にとっておこう。
ありがと。裕次兄ちゃん。
―Fin―
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