辿り着いた先は玄関だった。そこにはご兄弟みんな揃っている。

「おはようございます。みなさま揃ってどうされたのですか?」

 まだ事態が把握できていない私は挨拶と共に疑問をぶつける。

「おはよう。要くん。いや、今日は君の誕生日だからね、楽しんでもらおうと思って」
「は、はい?」

 まだ困惑したままだった。その答えを聞いても全く事態を把握できない。

「要兄ちゃん、今日は特別だからね?」
「そうそう!特別にー、奏ちゃん貸してあげる!」
「え?え?」

 か、貸す?

「おいおい、いつから奏はバカ兄貴のになったんだよ」
「まあまあ…。ほら、奏。もう良いよ」

 そんなやり取りをしていると、雅季様の言葉で後ろの影に隠れていた彼女がひょこっと顔を出す。そして、笑顔で私の前にやって来た。
 その笑顔に思わずドキッとしてしまう。

「じゃあ、御堂さん!行きましょうか!」

 彼女はにっこり笑うと私の手を取る。

「お、お嬢様!?」
「じゃあ、みんな。行って来るねー!」
「うん、よろしくねー」
「いってらっしゃい」
「夕方には帰ってきてくださいね」
「わかってるよー。それじゃあ、また!」

 あっという間に手を引かれ、外へと出てきたのだった。

「うーん、今日は良いお天気!絶好のお出掛け日和ですね!」

 笑顔でそう言うと、彼女の髪が風に揺れる。ブラウスに少し短めのスカート。少しだけ化粧をしているのか、いつもと印象が違って見えた。

「あ、あの…一体どこへ?というか、何が起こっているのですか…?」

 未だ頭の中は大混乱。でも、どこか頭の片隅で、彼女と一緒に出掛けられることを嬉しく思っている自分もいた。

「何って、デートですよ!デート」
「で、デート!?」

 彼女は笑いながら続ける。

「そうです。で、今から行くところは水族館です。この前友だちにチケットもらったんですよ!」

 嬉しそうに話す彼女。そんな彼女を見ていたら、色々と考えていた自分がなんだか馬鹿らしく思えてきた。

「あ…嫌…でしたか?」

 急に不安そうな顔をして顔を覗き込んでくる。そんな様子を見て、やっと自分にも笑みがこぼれた。

「ふふ。奏と一緒なのに。嫌なわけ、ないに決まってるよ」

 だって、大好きな君とのデートなのだから。

 彼女はちょっと顔を赤くしてから、また笑顔で言った。

「良かった!じゃあ、行きましょ!」

 そして、また手を取る。
 今度はしっかりと手を繋いで。


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