気づけば、時計の針は23時を指していた。
やっと部屋に向かえるとホッと一息。
本当はもう少し仕事があったのだけれど、気を使ってくれたのか柊さんが全てを引き受けてくれた。
礼を言って執事室を後にする。
こつこつという靴音が廊下に響き渡る。
外には綺麗な月がポツリ。
部屋に戻ると擦り寄ってくる猫が一匹。
まるでお疲れ様と言われているようだった。
「ただいま、ミュウ」
そして、おめでとう、とも。
―…コンコン
「はい?」
急なノックの音に、脱ぎ掛けだったシャツのボタンを一つ止め直す。
ガチャリと音を立ててドアを開けるとそこに立っていたのは奏だった。
「こんばんは、要さん」
ひとつ笑みを浮かべてやってきた彼女に同じ言葉を返した。
「こんばんは」
「今、良いですか?」
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