【Side 雅弥】

「っくそ…」

 時間はあっという間に過ぎていった。
 それは、その分楽しかったからというのもそうなんだろうけれど…。
 少し、悔しい。

 あいつに、告げられなかった。


『パーティーの後、話があるんだ』


 たったその一言を告げたかっただけなのに。

 幕を閉じたパーティー会場はまだ少しだけ熱を帯びていて、そこかしこで談笑の声が聞こえて来る。
 そんな中、俺はただ一人の影を追いかけていた。

 奏だ。

「わぁ…俺、もうダメ」
「しっかりしてください、裕次様。ひとまず、お部屋に戻りましょう」
「ごめんね、要兄ちゃん…」
「いいえ、瞬様はお気になさらず。ここは私にお任せください」
「へへへー。ありがとぉ、要さぁん」

 あいつの姿を探していると、裕兄、要、瞬の3人の姿が目に入ってきた。
 どうやら裕兄はしっかり酔い潰れたようだ。

「ったく…誰のパーティーだよ」

 だけれど、それは裕兄の良い所でもあると、そう思ってる。

「あ、雅弥兄ちゃん」
「おう、瞬。お疲れ」

 瞬はこっちに気づくとカクンと首を傾げる。

「もしかして、雅弥兄ちゃんも探してるの?」
「へ?…も?」
「うん。さっきね、奏お姉ちゃんが雅弥兄ちゃんを探してたから」

 ってことは、おいおい。すれ違いってやつかよ。

「マジかよ。なぁ、瞬。奏のやつ、どこ行ったか知らねぇか?」
「うんとね…テラスの方行ったよ。庭先に出て行ったんじゃないかな?」
「そうか、さんきゅ!」
「ううん。いってらっしゃい」

 軽く礼を告げると、急いでテラスへと向かった。

「…感謝してね、雅弥兄ちゃん」

 そう小さく瞬が呟いたことを、俺は知らない。


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