【Side 雅季】

 結局…パーティーの間、奏に言えなかった。
 どうしても、伝えたかったことがあるんだけれど。

 まさか、邪魔が入るなんて思わなかったな。

 最初は雅弥。次に巧。
 つくづく思う。僕の前には敵だらけだ。

「さて…これからどうしようか」

 ネクタイを緩めながら歩き出す。
 会場の熱はまだ冷めていなかったけれど、もうそろそろ良いだろう。
 途中、酔いつぶれた裕次兄さんと近くで介抱の手伝いをしている瞬に会った。
 すぐに要さんがやってきて、裕次兄さんは部屋へと運ばれていったのだけれど…。
 一体、誰のパーティーなんだ。ってくらい騒いでたなと、そんなことをふっと思った。

「おや。主役はもう退散ですか?」

 ドアを開けようとした時、ふいに声を掛けられた。
 振り返った先に居たのは修一兄さんだった。

「今日は、楽しめましたか?」
「うん。ただ、少しだけ疲れたよ」
「ふふっ。でも楽しめたなら良かった。誕生日は年に1度しかやってきませんからね」
「修一兄さんは?楽しんだ?」
「えぇ、楽しませてもらったよ。裕次ほどではないかもしれませんがね」

 そう言うと、彼はくすくすと笑っていた。きっと修一兄さんも飲んだんだろう。頬が少しだけ赤くなっている。

「そういえば」
「うん?どうした?」
「奏…見なかった?」
「奏さんですか?いや、僕は見ていないな」
「そう…」

 その後、修一兄さんは「見掛けたら声を掛けておく」と言い、そっとドアを開けてくれた。


 部屋について、ジャケットをベッドに落としその隣に座る。
 彼女が見たら“僕”らしくない格好だと言うだろう。
 まぁ、その彼女はいないからわからないのだけれど。

 少しだけ引かれたカーテンの先に闇夜が見える。
 膨らみ掛けの月が少しだけ顔を覗かせていた。


…トントン


 その時だ。小さく控えめなノックの音が聞こえて来た。

「はい?」
「あ、あの…私、奏なんだけれど…」

 思わず、急いでそのドアを開ける。
 すると、彼女は驚いた顔をしていた。

「あ…もう、休んでた?」

 そして控えめに言葉を続ける。

「いや、まだ戻ってきたばかりだよ」
「そっか!良かった…」

 安心したような笑顔を見せる彼女。

 その、笑顔に何度心奪われたことか。
 ねぇ、知っててやってるわけ?

「それより、どうかした?とりあえず入りなよ」
「う、うん。ありがとう」

 そして、僕は彼女を部屋へと招き入れる。
 今度は誰にも邪魔されないように…。


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