【Side 奏】
盛り上がりは最高潮を見せていた。
それはそれは盛大に執り行われたパーティー。
今日はあの二人の誕生日なのだ。
4月19日。雅季くんと雅弥くんの生まれた日だ。
「おい、奏!こんなところで何やってんだよ」
会場の隅、壁際で一息ついていた私に声を掛けてきたのは雅弥くんだった。
「折角の俺の誕生日なんだぞ!もっと騒げよ」
「私、結構騒いだよ?ちょっと疲れちゃったくらい」
「なんだよ、体力ねぇなぁ」
けらけらと笑う雅弥くんは本当に嬉しそうだった。
パーティーと言っても、今日は堅苦しいものではなく、ホームパーティーのようなものだから。
いつもの正装とは少し違った格好をしている雅弥くん。
それでも、その姿はどこに居てもすぐにわかるほど目を惹くものだ。
「雅弥くん、ケーキたくさん食べた?」
「おう!食ったぜ!っつっても、俺だって子どもじゃないんだし…」
「へぇ、その割には結構がっついてたじゃない?」
「お、お前見てたのかよ!?」
クスクス笑いながらそう告げると、雅弥くんは真っ赤な顔をして言った。
その後、ばつが悪そうな顔をしていたんだけれど。すぐに一つ咳払いをして普段の表情に戻る。
「そうだ。お前さ」
「何?」
「その…なんだ、この後なんだけれど…」
「うん?」
「あ、雅弥!ここに居たのか」
雅弥くんが何かを言い掛けた時だった。雅弥くんの後ろからものすごい勢いで裕次お兄ちゃんが飛びついてきた。
「うわ!って、おい!バカ兄貴、何すんだよ!」
「バカとはなんだ、バカとは!っていつもみたいに説教したいところだけれど。今日の俺は寛大だもんねぇ」
へらへらと笑いながら陽気そうに言う裕次お兄ちゃん。
後ろから雅弥くんの肩に腕を掛けてもたれかかっている。
「ったく、ていうか…なんなんだよ」
呆れ顔で応える雅弥くんに裕次お兄ちゃんは相変わらずの笑顔で続ける。
「さっき向こうで修一兄さんが呼んでたよーって言いに来たんだよー」
「あぁ、そうか。わかった…って、とりあえず、離せ!裕兄、酔ってんだろ!?」
「裕次お兄ちゃん…大丈夫?」
「えぇ?平気平気ー」
その姿はとても大丈夫そうではなくて。
すごく楽しいんだなぁ、嬉しいんだなぁっていう雰囲気が十二分に伝わってくる。
「とりあえず、行って来た方がいいんじゃない?雅弥くん」
「お、おう…そうだったな」
歯切れ悪く返事をすると、雅弥くんは裕次お兄ちゃんをそのまま引き摺るようにその場を去っていった。
「…何の話、したかったんだろう?」
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