そして、そんなことがありながらも…やっぱり時間は経ってしまうわけで。
あっという間に大晦日の日を迎えてしまった。
華やかなパーティーはあっという間に時間を奪っていって。
俺の気持ちはどんどん下がっていくばっかりだ。
「折角…明日は俺の誕生日なのに」
ワイングラスを片手にバルコニーに出てみれば、外は綺麗な星空。
ジャケットを羽織っているにしても、上着を着ていない外の空気は冷たくて。
それでも、なんとなく外にいたいと思った。
腕時計に目をやると、時計の針は23時を回っている。
きっと、そろそろ年越しのカウントダウンの準備なんかを始める頃だ。
「こうなったら…抜け出しちゃおうかな」
少しふてくされた顔でそんなことを考えていると…
「あ!いたいた!裕次お兄ちゃん!」
後ろから可愛い声。この声は…
「奏ちゃん…!」
薄いピンク色のドレスが眩しい俺の恋人。
あぁあ。彼女の姿を見ただけで、彼女が俺を呼ぶ声を聞いただけで…こんなにも気分が晴れていくなんて。
奏ちゃんはわからないだろうな。
ぱっと明るくなったその返事の声は、真っすぐ彼女に届いて。
くるくるとよく変わるその表情はあっという間に笑顔になった。
「探したんだからね?」
「う、ごめんね?」
「ううん。いいの。それよりも…」
「う、うん?」
「ねぇ…裕次?」
急に変わったその呼び方は、二人きりの時だけのもの。
「ちょっと、会場抜け出そう…!」
そう言って、俺の手を取るとぐいっと引かれる。
「え…えぇ!?」
な、な…何が起こるの!?
時計の針は、刻一刻と…今年の終わりを告げていく。
← | →