そんなことを考えながら、過ごしていた誕生日パーティー。
 ふと、奏ちゃんの姿がないことに気づいた。

「…あれ?」
「うん?どうした?瞬」

 呟いた言葉に近くにいた雅弥兄ちゃんが反応する。

「え?あぁ、お姉ちゃんがいないなぁって…」
「奏?そういえば…。化粧直しでも行ったんじゃね?」

 そんな会話をしていたら、ジュースを持った要兄ちゃんがやってきた。

「お嬢様でしたら、先程ご自分のお部屋に戻られましたよ?」

 にっこりと笑いながら、空になったグラスを取り替えてくれる。

「え?お姉ちゃん、もしかして…体調悪くなったとか?」

 最近忙しそうだったし…。不安な表情で聞くと、要兄ちゃんはふわっとした笑顔で返事をくれる。

「いいえ。何か…忘れ物をしたからとおっしゃっていましたよ」

 そして、笑顔で一礼するとその場を離れていった。

「全く、やっぱ奏はそそっかしい奴だな」

 からかうように笑いながら言う雅弥兄ちゃんも、何か食べ物を取ってくると言い、その場を離れる。
 その場に一人残された僕はキョロキョロと回りを見回し、近くに裕次兄ちゃんがいないことを確認する。

 きっと見つかったら長いから…。

 視界に入ってきた裕次兄ちゃんは、少し離れた場所で修一兄ちゃんと笑顔で会話していた。

 よし…

 すっと足早に会場を抜け出す。
 と、

「瞬?」

 ふいに廊下で呼び止められる。

「雅季兄ちゃん…」

 そこにいたのは雅季兄ちゃん。ちょうど会場に戻ってきたところだった様。

「どうかした?今日の主役なのに。ジュースの飲みすぎ?」
「えっと…そう」

 少しもじもじしながら言う僕に、ふっと笑みをこぼす雅季兄ちゃん。

「この状態なら行きたくもなるよな」

 そう言われて、じゃあ…とその場を後にしようとした。

「あぁ…瞬?」

 振り替えると、雅季兄ちゃんは柔らかい笑みでこちらを見ていた。

「…奏なら、まだ部屋だよ。さっき声が聞こえてきた」
「え…」

 その一言だけ告げると、雅季兄ちゃんは会場へと入っていった。

 …わかってたんだ。

 さすが…と思いながら、僕はこれ以上誰かに見つかる前にと、足早に奏ちゃんの部屋へと向かった。


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