―次の日。
カーテンを開けて日の光を浴びる。雲一つない綺麗に晴れた空。
「うん!良い天気。お散歩日和て感じかも」
今日は休日。特に予定もなかった私の朝はのんびりだった。
と、その時。
―コンコンコン…
規則正しいノック音が耳に入ってきた。
御堂さんかな?
「はぁい…」
私はすっとドアを開ける。御堂さんがいるものだと思って。
「ゆ、裕次お兄ちゃん!?」
しかし、そこにいたのは笑顔の裕次お兄ちゃんだった。
そして…
「ど、どうしたの?その格好…」
私は寝ぼけているんじゃないかって思ってしまった。
だって、目の前にいる裕次お兄ちゃんの恰好は…喫茶店のギャルソン。その制服を着ているのだから。
「奏ちゃんに見せたくて!どう?似合う?」
まだ事態を把握できていない私を余所に、裕次お兄ちゃんは上機嫌で話しかけてくる。
パリッとした白シャツに黒のネクタイ。黒のベストと長めのエプロンがさらに全体を締めていて、裕次お兄ちゃんの声とは逆に落ち着きを見せる。
どこからどう見ても…素敵なギャルソン。
「え?あ…すごく似合ってるよ?」
少しいつもよりも大人っぽく、どこかセクシーに見える裕次お兄ちゃんにドキドキしながら、私は答える。
「そっか!よかった。実はね、今度の学祭で喫茶店やることになってねー。模擬店で。やってみたかったんだよね、ギャルソン!」
ウキウキしながら、目を輝かせながら話す裕次お兄ちゃんを見て、ついくすっと笑ってしまった。
「それで、衣装が届いたんだ?」
「そうそう!でね、折角だからと思って着てみて…一番に奏ちゃんに見せたかったんだ」
ウインクをしながら嬉しそうに言う裕次お兄ちゃん。私はそれに答えるように満面の笑みを見せる。
「しっかり出来るの?」
少し意地悪く聞く。
「大丈夫!要さんに指導してもらったから!」
あ、それであの時…。
私の中でふと思い出した小さな疑問。それがあっという間に溶けてなくなった。
「それなら、大丈夫だね」
「うん。あ、それでね…」
すっと手を差し出して、裕次お兄ちゃんが言葉を続ける。
「今から、お茶をしませんか?お客様」
その様子にくすくすと笑いながら、私は裕次お兄ちゃんの手を取った。
「喜んで」
お互い顔を合わせて笑い合うと、手を繋いで部屋を後にした。
さぁ。楽しいお茶をしよう?
―Fin―
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