少し火照った頬に夜風が気持ちよく当たった。
 今日はなんだか慌しく…それでいてとても楽しい一日だった。

 たまには…こういうのも良いな。

 そう思っていると、

「あ、ここに居た」

 ふいに声を掛けられる。振り返るとそこには奏がいた。

「ふふ。外は気持ちが良いですね」
「そうですね」

 少し静まり返ったその場所は、月明かりだけがはっきりとしていた。
 その光に照らされた横顔がまたいつもよりも彼女を大人に見せる。

「酔っちゃったんですか?」
「だいぶ…すすめられましたからね。久しぶりにあんなに飲みました」
「裕次お兄ちゃん、すごかったもんね」

 そう言うと彼女は少し赤い顔をした。

「…大丈夫、だった?」

 その頬に触れる。少しだけ熱を帯びていた。

「だ、大丈夫だよ!」

 さらに顔が赤くなったのが月明かりですぐにわかる。

「…キスは」
「え?」
「奏にキスするのは俺だけがいいから…」

 じっと見つめる。彼女も赤い顔のまま、目を逸らさない。
 すっと、目を細めて顔を近づける。それに応じて彼女も目を閉じた。
 月明かりの下、少しだけ長いキス。

「要さん…」
「うん?」
「今度は私が酔っちゃうよ」

 そう言うと彼女は笑った。

「では、介抱は私が致しましょう」

 いたずらっぽく告げると、また一つキスをした。

 また、来年も、その次の年も…ずっとこれからも。
 君と一緒に過ごせたら良い。

 それが最高の誕生日プレゼント。

 夜風が頬をそっと撫でる。
 月明かりだけが2人を見つめていた。


―Fin―


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