教師の憂鬱


 最近。奏のことでやきもきすることが多い気がする。

 一つ一つが気になって、我ながら…全然余裕がないなと感じる。
 でも、そんなこと…とてもじゃないが奏には言えない。恥ずかしいというのもあるのだけれど。
 なんとなく、子どもっぽくて嫌だったから。

 独占欲と嫉妬心。それを知られたくなくて、どうしても大人ぶってしまう。
 本当はこんなにもガキっぽい感情に囚われているのに。

「…修一お兄ちゃん?」

 そんなことを考えていたら、急に名前を呼ばれた。
 そうだった。今は奏に勉強を教えてる最中。こんなこと、考えてる場合じゃない。

「大丈夫?ボーッとしてたけれど…疲れちゃった?」
「い、いえ。大丈夫ですよ。問題は?解けた?」

 慌ててそう聞くと、うーんと言いながら彼女は苦笑いを見せた。

「どこが、わからなかったの?」

 そう言うとふわっとした笑顔を見せる。
 こういう笑顔にドキッとする自分がいる。

 …この笑顔を見てドキッとするやつは、他にもいるんだろうな。

 そして、また考えてしまう。
 どうしても、どうしても。

 ずっとずっと、目の届くところにいてくれればいいのに。

 そんな無理なことも考えてしまうほどに。


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