夜風の庭園


 その場所は、僕の居場所であり…また最近では彼女の居場所でもあった。

「奏さん」
「修一お兄ちゃん!」

 笑顔で彼女を呼ぶと、彼女もまた笑顔で応えてくれる。
 その笑顔が堪らなく可愛くて、一瞬ドキッとする。でも、その瞬間が何気に好き。

「奏さんはここがお気に入りのようですね」
「うん!だって、すごく落ち着くから」

 ここは彼女がこの家に来たばかりの時に、一緒に来た場所。だから、その言葉が嬉しかった。
 それと、ここに来れば…彼女に会えると思えたから。
 夜風が頬を撫でる。もうすっかり夜風が気持ち良く感じる季節になった。

「風がすごく気持ち良いね」

 彼女が隣で伸びをする。

「そうですね。最近は本当に暑くなってきましたから」

 隣に目をやると、彼女の横顔が見えた。時折、風に揺れる髪が少しだけ彼女を大人びて見せる。
 そんな単純なことなのに、この胸は簡単に鼓動を早くした。

…やれやれ、困ったもんだな…。

 そんな気も知らずに隣では無邪気な笑顔が弾けている。


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