月夜の勉強会


 その日、奏は書斎に居た。

「…何してるの?」
「あ、雅季くん!」

 彼女は僕の声に気付いてくるんと振り返る。少し長めの髪がふわっと舞った。

「奏がここにいるなんて珍しいね。本はあまり読まないのに」

 こういう時、こんな言葉しか出ない自分が少し憎い。
 彼女は少しだけ口を尖らせてこう言った。

「ひどいなぁ。まぁ、確かに事実なんだけど」

 最後にいたずらっぽく微笑んで舌をペロッと出した。
 その仕草があまりにかわいくて少し戸惑う。

「…で?何してるの?」

 冷静を装って…もう一度同じ質問。目線は合わせない。…違う、合わせられない。
 そんな僕の様子には気付きもせず、奏はいつもの調子で返事をする。

「えっと、課題の資料をね…。難しかったから」

 彼女の手には課題で使うであろうレポート用紙があった。

「ちょっとだけだから、ここで書いていこうと思ったけど、雅季くんの邪魔になっちゃうかな?」

 そう言うと彼女は目当ての本を持って出ていこうとする。
 それを僕は止めた。

「…いいよ。ここでやってけば?」
「え?いいの?」
「邪魔だなんて一言も言ってないし。それに奏の方が先にいたんだし…」

 最後の方はほとんど小声。きっと彼女には聞こえていない。
 邪魔なわけない。むしろ…一緒に居れて嬉しいのだから。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 にっこり笑うと奏はデスクに向かっていった。


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