「ほら、結論は出たよ?」
少しだけ早口になる自分の言葉。
「…え?」
彼女の顔は戸惑いの色。
「答えはシンプル。ねえ?素直に彼に伝えてあげれば良いん…だよ?」
途切れそうになる言葉をぐっと押し出して、一緒に彼女の背を押す。
本当は押したくない、その背中を。
「…うん。私、頑張ってみるよ」
「うん!それでこそ、俺の妹だ!」
ごめん。限界。
その言葉と一緒に彼女をぎゅっときつくきつく抱きしめた。
「きゃっ!ゆ、裕次お兄ちゃん!?」
「ごめんごめん。でも…少しだけ、こうさせていて?」
「…どうかした?」
きゅっと自分の背を締める腕の温度。心配そうな声色。
「なーんにも?可愛い可愛い妹に彼氏が出来るんだよ?これ以上嬉しいこと、ないじゃないか」
精一杯おどけて見せて。でも、顔は見せなかった。
泣き出しそう…だったから。
「…ありがとう、裕次お兄ちゃん」
「うん」
彼女をぎゅっと抱きしめながら、鎖骨にあたる指輪を感じてる。
そう、この気持ちは抱いてはいけない気持ちだから。ここで封印して、彼女の幸せを願って…。
ねえ、でも。
今だけは
いいだろう?
行き場のない、でも誰にも負けない気持ち。
君が好き。
たった一言が届かない。
もう、きっと一生届くことはない。
「奏?」
「何?」
「大好きだよ」
「ふふっ。ありがとう、裕次お兄ちゃん」
彼女の温度が心地良い。彼女の声が心地良い。
届くことのないこの想いは、涙と一緒に流すから。
今夜だけは許してください。
ちゅっと軽く彼女の額にキスをして、驚いた彼女の顔を見て、
泣き出しそうな笑顔を作りながら「がんばれ」と一言。
幸せになってね?
それが、君の幸せが、
俺の幸せだから。
―Fin―
→あとがき
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