その後、沈黙を破ったのは…自分だった。
 どうしても、聞きたいことがあったから。
 でも、それは今の自分にとって、辛い言葉になるかもしれない。
 爆弾のような気持ちを抱えながら、そっと告げる言葉。

「奏ちゃんはね?それを聞いてどう思った?」
「え?」
「…巧くんのこと、好き?」

 無理して作ったその笑顔。本当は泣きたいくらい辛かった。
 自分じゃない誰かに向かっている彼女の気持ち。
 なんとなく、痛いほどわかってしまったんだ。

「…うん」
「そっか」

 ねえ、今、俺は上手く笑顔を作れていた?

「でもね?どうしたら良いかわからなくて」
「どうして?彼が好きなのに?」

 それ以上、傷を抉るな、俺…。

 笑顔の裏側で泣き出しそうな気持ちを必死で隠す。

「付き合ったこととかないし…それに、その時はその後すぐに雅弥くんが来ちゃって…なんだか曖昧になっちゃったし」
「雅弥もタイミングが悪いなぁ」

 ははって笑って見せても、どこかその笑顔はぎこちなくて。

 俺は、君に笑顔を見せれてる?

「なんか、こういうのってあまり相談できる人いなくって…」
「それで俺を頼ってくれたんだ。嬉しいなぁ、お兄ちゃんは!」

 違う。本当は苦しくて仕方ないんだ。

 一瞬惑う自分を戻したのは、首元で光った指輪だった。
 そっか。それで、彼女は俺に…。

「…ねぇ、奏ちゃん?」
「うん?」

 彼女は真っ赤な顔をそっと上げる。
 少しだけ上目遣いになったその顔が、自分じゃない誰かを思っているものなんだと思うと胸が苦しくなる。

「素直に、言ってみるのが一番だよ?」
「素直…に?」
「そう。好きなら好きだって彼に伝えてあげたら?」
「そ、そっかぁ…」

 あぁ、ごめんね。

 俺…―もう限界だ。


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