結局、ドライブデートはあまり長くはせず、いつもよりも早めに家に帰ってきた。
 そこで約束通り、奏との勉強会をすることにした。

「…で、xをここに代入して…」
「あ、わかった!」

 カリカリと音を響かせながら真剣に解いていく彼女。
 そんな真剣な横顔を見るのは少しだけ新鮮で、思わずじっと見つめてしまった。

「え?何?」

 その視線に気づいた彼女はぱっと顔をこちらに向ける。
 気づけば、結構近い距離。

「いや、な、なんでもないよ」

 なんだか急に恥ずかしくなってきた。じっと見つめていたのは自分だったのに。

「そ、それならいいけれど…」

 そう言うとまた教科書とノートに向かう彼女。良く見ると奏の顔も少しだけ赤くなっていた。
 そんな彼女をまた見つめてしまう自分。
 真剣な眼差し。伏目がすごく綺麗に見えるのは少し長い睫毛のせいなのかな。
 少し紅潮している頬に、少し尖らせた唇。もうすぐ目に掛かってしまいそうな前髪から、すっとした鼻が続いていて、贔屓目なしにしたとしても…その横顔を綺麗だと感じた。

 あぁ、そっか。
 俺、この横顔に惹かれたのかも。

 ふと気づいたことだった。でも、気づいてしまったら、なんだかすごく愛おしく感じてしまって。

「ねえ、奏?」
「うん?なぁに?」

 彼女の目線は落ちたまま。

「キスしていい?」
「…え!?」

 一瞬の内に赤くなった顔をこちらに向けた彼女は、あっという間に俺に唇を奪われた。

「…ごちそうさま」

 にっこり笑顔の俺を驚いた顔をして見ている奏。

「ゆ、裕次お兄ちゃん…」

 勉強の邪魔しちゃってごめんね。
 でも、

 君の誘惑に勝てなかったんだ。

 きっとまたやっちゃうかと思うけれど…
 その時も許してね。


―Fin―

→あとがき


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