良く晴れた昼下がり。今日の講義はもう終わったため、なんとなく学校内を歩く。
色々な人に声を掛けられながらも、頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
今日はどんな話をしよう。今日はどんな顔が見れるだろう。今日はどこに行って、何をしよう。
そう考えていると時間はあっという間に過ぎていくし、楽しみがたくさん待っているようで、それだけで楽しく感じるのだ。
でも、俺は知っていた。
彼女は明るく、自分の支えにもなってくれているけれど。
だけれど、本当はとても弱いのだということ。
あの日、無言で取った手。
抱き寄せて涙した肩。
その時、彼女もまた泣いていたから。
静かに、きっと自分に悟られまいとしながら。
「裕次お兄ちゃん?」
「へ!?」
そんなことを考えていたら、急に後ろから声を掛けられた。
そこに立っていたのは、まさに考えていた人。奏だった。
「奏!?あれ?授業は…?」
彼女は鞄を持って立っていたから。
「この間言ったじゃない。テスト週間だって」
「あ。そうだった…」
彼女のことを考えている割に…こういうところはすぐに忘れてしまう自分がなんだか情けなく感じる。
「裕次お兄ちゃんは?」
「俺はもう講義終わったの」
「そうだったんだ!じゃあ…、一緒に帰ろ?」
少しだけ赤い顔をした彼女。そんな彼女が可愛くて可愛くて仕方なくなる。
「もちろん!じゃあ、行こうか?」
「うん!」
まだ少し赤い顔をしながらの笑顔。その場でぎゅっと強く抱きしめたくなったけれど…前にやったら怒られたから我慢我慢。
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