「ペルセウス?」

 不思議そうに聞く奏ちゃんに向かって、僕はこくんと小さく頷いた。
 彼女の言ったペルセウスとは、ギリシア神話の英雄でメドゥーサを倒した彼ではない。
 いや、正確に言えば合ってるんだけれど…ここでのペルセウスはペルセウス座のこと。

「明日の夜がね、ピークなんだ。ペルセウス座流星群」

 8月。この時期に毎年定期的にやって来る流星群がある。とても大きなものというわけではないのだけれど。それでも運良く条件が揃えば、1時間に50個は流星が見られるという、非常に見やすい流星群なのだ。
 その流星群のピークがちょうど明日だった。

「それでね」
「うん」
「奏ちゃんと…一緒に見れたらなぁ…て思ったんだ」

 あんまりこういうことには慣れていないから、どこか照れくさい。

「本当に!わー、嬉しいなぁ。私、こういうのってあまり見たことがないから」

 星座に詳しくないと付け加えながら、ペロッと舌を出す。
 そんな仕草がなんだかすごく可愛らしく見えた。

「じゃあ、明日の夜…奏ちゃんの部屋に迎えに行くね」
「うん!わかった」
「取って置きの場所、案内してあげる」

 そういうと彼女の顔は笑顔で溢れる。
 この笑顔が大好きだ。

 この笑顔にするためならどこにでも案内するよ。

「そうだ」
「何?どうしたの?瞬くん」
「ピークの時間、真夜中だけれど。大丈夫?」
「だ、大丈夫だよー!頑張って起きてるから!」

 そう言いながら笑い合う。自然にこみ上げてくる嬉しさがとても心地よかった。


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