結局、そのまま特に何をするでもなく、学校での一日は終わった。
家に帰ってきてからも放課後の出来事を思い出してしまう。別に、ただクラスメイトと話していただけではないか。
ガキっぽい気持ちに苛立つ。
と、そんなことを考えていると、ドアが小さく音を立てた。
「はい?」
「私です、奏」
一瞬、戸惑う。こんな気持ちのまま、彼女と話す事に躊躇いを感じたから。
でも、断る理由もなかったから…結局ドアを開けて彼女を招き入れるのだった。
「今、忙しかった?ごめんね」
「いいえ。大丈夫ですよ。どうしました?」
そう言うと、彼女は少し俯く。不思議に思って顔を覗き込むと、その頬は少しだけ赤くなっていた。
「…特に用事はないんだけれど…ダメ、かな?」
少しだけ顔を上げて話す奏。
その顔は…反則だろう?
そう思うと同時に、今まで考えていたことがすごくバカらしく感じた。
「修一お兄ちゃん?」
「今は…お兄ちゃんはいいよ?」
「え?あ、う…えーっと、修…ちゃん?」
「なに?奏?」
そう言って、彼女を抱きしめる。
少しだけ髪に顔を埋めると、彼女の匂いが鼻先をくすぐった。
本当はガキっぽいんだってこと。
彼女が気づくまでは絶対に言わないでいよう。
だけれど…―
「なぁ?」
「何?」
「今日の放課後…誰と話してたの?」
「…えぇ!?」
やっぱり君を独占していたいんだ。
なぁ、いいだろ?
―Fin―
→あとがき
← | →