「あぁ…もう、こんな時間か」
柱に掛かった時計を見る。また、もうすぐ1日が終わる。仕事をしているとあっという間だ。
1つ大きな溜め息をつく。
あぁ、きっとまた考えてしまうんだろう。
最近のお嬢様は何か雰囲気が違う。いつもと代わりはないのだけれど…どこか、なんとなく…。
夕飯後に裕次様がこっそり聞いてきたりなんかしたから、余計に気になる。
「ねぇ、要さんも思わない?最近、奏ちゃんすごく可愛くなったって」
裕次様はその後にまぁ、元々可愛いけどと続けた。そして、こうも。
「もしかして、恋でもしてるのかな?」
確かに、恋をすると女性は綺麗になると聞く。
「そう言われると…気になる…」
そして、結局また考えてしまう自分がいた。
見守る…それが一番執事としてはいい形なのかもしれない。
でも、それが出来ないのも自分。なぜなら…好きになってしまったから。
ふと、机に目をやる。小さな段ボール箱。そういえば、荷物が届いていたことを忘れていた。確か…奏様が頼んだ物…。
「届けなくては…」
今のこの気持ちのまま行くのはなんとなく億劫だったが、これも仕事。適当に気持ちを押し込んで部屋を後にした。
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