家に着いてからも、彼女が帰ってきてからもその感情が落ち着くことはなかった。
冷静を装って仕事をしていても、どこか引っ掛かりを感じて上手く行動できない。
修一様を始め、勘の鋭い雅季様や瞬様には何かあったのかと心配される始末。
一時の感情に支配されて冷静さを欠くなんて、執事失格だろうか。
今まではそんなことなかったはずなのに…。
彼女が来て、彼女と…付き合うようになってからは、何かを忘れてしまったかのようだ。
でも、どうしても聞くことが出来ない。
彼は、誰?
彼と何をしていた?
一体いつからこんなにも独占欲が強くなってしまったのか…。
「呆れたものだな…」
ため息まじりに出た呟きは誰の耳に届くでもなく、空気に混ざり合って消えていった。
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