生徒会の仕事を一通り済ませて、図書室へと向かった。
少しだけ、足早に。
図書室は居心地の良い沈黙が流れていた。時間が時間だったからか、ほとんど人は居なかった。
そんな中、奏は1人少し奥の本棚、それこそ本当に人の居ない…人の来ないような場所に居た。
「奏」
小さな声で声を掛ける。しかし、彼女は気づかない。本棚の本を見つめているというよりは、何かを考えているといったような感じ。
…巧には会ったんだろうか。何か話したのだろうか。
まとまらない考えが頭の中を支配する。
いろんな思いを抑えながら、もう一度彼女に声を掛けた。
「奏?」
「ま、雅季くん!」
少し近くで声を掛けたからか、彼女は驚いた顔をした。でも、その顔はすぐにいつもの笑顔に戻った…と一瞬思った。
実際は少しだけ違った。
「どうかした?」
「え?な、なんで?」
彼女はわかりやすい。すぐに表情に出るというか…。
「呼んでも気づかなかったし…それに、何か様子変だから」
「うぅ…」
彼女は少し俯いた。その顔は近くの窓から射した夕陽のせいか、それか別の理由からか少しだけ赤かった。
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