休日の空
その日。あいつもまた出掛ける用事があった。
「あれ、雅弥くんもどこか出掛けるの?」
ふいに呼ばれた自分の名前。振り返ると、奏がいつもの笑顔で立っていた。
小花柄のブラウスに膝丈くらいのスカート姿。髪型も少しだけ雰囲気がいつもと違う。
そんな様子に少しだけドキッとした。
「え、あ、あぁ、まあな」
急に声を掛けられたこと。いつもと違う雰囲気にドキッとしたこと。色々なことが自分の心臓の鼓動を早くさせる。
「そうなんだ。じゃあ、あたしと一緒だね。あたしも出掛けるところ」
格好を見ればすぐにわかる。いつもの奏の雰囲気とは全然違うのだから。
いつもよりも…大人っぽく、女らしく見える。
「そっか。なんだ?いつもよりお洒落してるじゃん。雰囲気もちょっと違うよな。あ、馬子にも衣装ってか?」
心の内がばれないように意地悪を言う。いつだってそうだ。本当はこんなちゃかすつもりなんてないのだけれど…。
「もーひどいなぁ、雅弥くんってば!まあ、確かにいつもとは違うかもしれないけれど」
奏は頬を膨らませて言う。いつもの会話。いつもの調子。
「相手はー?そんなにお洒落してるってことは男か?」
ニッと笑って言ってやる。本当は「違う」と言って欲しいと思いながら…。
本当に男と出掛けるようなら…気が気じゃない。
「そうだよーって言えたら良いけれど。残念、クラスの友だちと買い物です」
奏は舌を出しながらそう答えた。その答えにちょっと安心したりして。
でも、その次に出た言葉にちょっと反応。
「あ、でもこの間…巧くんに誘われたんだよな。まだ予定もわからなかったから返事してないけれど」
…寄りによってあいつかよ…!
「ふぅん…」
気にしていないふり。本当はすごく気にしてるんだけれど。
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