そんないつもと変わらないはずの1日が来ると思っていた日のこと。
 いつも通り、彼女と一緒に帰ろうと思ったのに。残念、今日は彼女と会えなかったんだ。

「一緒に帰りたかったのになぁ…」

 そう呟いても彼女はそこにいない。仕方ないから1人家路に着く。
 もしかしたら、彼女はもう帰ってきているのかも。

「ただいまー!」
「おかえりなさいませ。裕次様」

 そう言って迎えてくれた要さん。そして、俺は素直に要さんに質問する。

「ねえ、要さん。奏ちゃんってもう帰ってきてる?」
「えぇ。先ほど帰ってこられましたよ」
「そうなんだ!じゃあ、もう部屋にいるかな?」
「おそらくもうお部屋にお戻りになられているかと思いますが…」

 と、要さんの顔が少し曇ったのがわかった。

「どうしたの?」
「それが…、お嬢様ですが。なんだか少し元気がなかったように見えたのです」

 要さんは少し伏目がちに喋る。彼が心配しているのがすぐにわかった。

「裕次様は、このところお嬢様とよく一緒にいらっしゃるようですが…何か知っていらっしゃいますか?」
「ううん…俺もわからないや。ごめんね、要さん」

 いいえと一言要さんは告げる。確かに元気が無いようなら心配だ。

「じゃあ、俺、ちょっと奏ちゃんに会ってくるよ!」
 そう言って、彼女の部屋へと向かった。

 …コンコン

 無機質な木の音が廊下に響く。
 しかし、中から応答の声がない。

「あれ?いないのかな…?」

 ドアノブに手をかけると、鍵が開いていた。少しだけドアを開けて中を覗く。
 そこに彼女の姿はなかった。

「どこ…行ったんだろ」

 少し嫌な予感がした。
 前にも、こんなことがあった。それは彼女がまだこの家に来たばかりの時のこと。

「と、とりあえず…心配だし。探そう」


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