「奏ちゃーん!!」

 その姿を見つけて、すぐに走り出した。彼女はそんな俺を見つけて少し顔を赤くしながら呆れ笑顔でこう言うんだ。

「裕次お兄ちゃん、声大きいよー…」

 でもね、知ってるんだよ。拒否の顔色じゃないってこと。
 だからね、今日も俺は君に抱きつくの。

「会いたかったよー。講義早く終わんないかなぁってそればっかり考えてた」
「もう、お兄ちゃんってば…。とりあえず、離れてよ。恥ずかしいよ」

 彼女はそう言うと、赤い顔をしながら俺に言った。
 学校の敷地内だろうとどこだろうと俺にとっては関係ないのになぁ。
 と、そう思いながらも素直に引き下がってみる。彼女はまだ少し赤い顔を俺に向けて、こう言った。

「お疲れ様、裕次お兄ちゃん?」

 大好きな笑顔付で。

「うん!奏ちゃんもね!」

 そういうと彼女はまた1つ笑ってくれた。
 彼女は気づいているんだろうか。俺のこの気持ち。なんとなくくすぐったいような気持ち。なんて言っても、俺もまだ最近気づいちゃったばかりなんだけれど…。

「ねえ、奏ちゃん。一緒に帰ろう?」
「うーん、…いいよ」

 少し悩むふりをして彼女は答える。

「じゃあ、お兄ちゃんとデートしてから帰ろう!」
「で、デート!?」

 そう言うとまた顔を赤くするんだ。でも、俺はその顔がたまらなく好きだった。
 すごく可愛くて、すごく…愛しく感じるから。

 時々、独り占めしたくなるくらいに…ね。


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