「巧くん?」
「…へ?」
「どうかしたの?」
目の前には僕の顔を覗き込む人。
時刻は16時過ぎ。少しずつ外の声も大きくなってきた頃だ。
自分の机には学級日誌。
そういえば、日誌書いてる途中だった。
どうして、今になってあの頃のことなんて…。
「教室に戻ったら巧くんがいたから。でも、考え事してた?ごめんね」
「そ、そんなことないよ。大丈夫だよ、奏ちゃん」
心配そうな彼女の瞳にうっすらと自分の顔が写った。
少しだけ赤い顔をしている自分が妙に情けなくて。
あぁ、あの頃から…好きだったのかなぁ。
「巧くん?」
少しだけ小首をかしげる彼女の可愛さと言ったら。
もうね、雅弥にも雅季にも見せたくなくなるね。
あれからもう数ヶ月が経つ。
だんだんと彼女に心を開いていった二人を近くで見ていた。
わかるよ、どんな気持ちで彼女を見ていたのか。
きっと、同じでしょ?
「ねえ、奏ちゃん」
「うん?なぁに?」
「あのさ…」
この続きは、誰にも教えてあげない。
仲良しなアイツらにだって、教えてあげない。
大事な大事な気持ちは、彼女だけが知ればいい。
さあ、
秘密を始めよう。
―Fin―
→あとがき
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