「それじゃあ、転校生を紹介する…―」

 先生に呼ばれ教室へと入ってきたのは一人の女の子。
 どこかクラスにいる女子とは違う雰囲気を持っている不思議な人だった。

「西園寺奏です。よろしくお願いします…」

 少し頬を赤らめて挨拶をした。
 僕は、その顔に少しだけドキッとした。

 しかし、クラスはその苗字を聞いてざわついている。
 それもそうだ。
 生徒会長とサッカー部のエースの二人と同じ苗字だったから。

「あの子が…?」
「そうみたいだね」

 ざわざわとにわかに騒ぎ出す教室内。その様子を恥ずかしそうに、でもどこか不安そうに見ている彼女。近くで欠伸をしながら面倒くさそうな顔をしている雅弥とメガネを直す雅季。

「席は、蒼井の隣が空いてるな。よろしく頼む」
「あ、はい」

 不意に呼ばれた自分の名前に顔を上げれば、頬を赤らめている彼女と目が合った。


 トクンッ


 なんでもないことのはずだったのに。
 何でだろう。
 なんかざわついた。 

「えっと、奏です…よ、よろしくね。蒼井くん」

 ちょこんと控えめに席に座ってから顔を覗き込むように挨拶をしてきた君を見て、
 僕の中で何かが始まる音がしたんだ。


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