なんでそんなことを聞こうと思ったのか。
 それは、私にもわからない。

「蓮さん」
「ん?どうした?奏」

 それは、蓮さんが家庭教師に来ていたある日のことだ。

「…やっぱ、良いです」
「なんだ?気になるじゃないか」

 そう言うと、蓮さんは少しだけこちらに顔を向けた。
 ノートや参考書を見ていたため、少しだけ下を向いていたその頭はなんだか首を傾げているようにも見えて。
 そんな様子にドキッとしてしまっただなんて、とても蓮さんには言えない。

「さっきの問題の説明、わからなかったか?」
「い、いや…それは大丈夫です」
「そうか」

 そう言うと、こちらを向いていた顔をまたノートに戻す。
 先程自分が解いた問題に次々と赤ペンが入っていくのだが、なんとなくそれが花が咲いたようで綺麗に見えてしまった。

「うわ…」
「あぁ。次はこの問題だな」
「そう…ですね」

 思わず口から漏れ出た言葉。その言葉に蓮さんは、ははっと少し笑った。

 この人は、ずるい。

 普段はどこからその自信は来るんだろうってくらいの態度を取っていたり、すごく子どもっぽいことを言ったりしたりするのに、こういう時の表情はすごく大人っぽくて綺麗なんだもん。

 おかしいな、こんな気持ちになるなんて思いもしなかったのに。


|

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -