夕暮れ染まる教室で、彼女は一人静かに机に向かっていた。
「ごくろうさまです、奏さん」
「あ、修一センセ」
静かに声を掛ければ、パッと華やぐ笑顔が見れた。
「奏さんはいつも一生懸命書いてくれますね、日誌」
スッと近づいて、机の上に広げられているそれを見る。
黒く小さな丸文字がびっしりと羅列されていた。
「結構、好きなんだ。こういうの」
「しかし、本当にびっしりだ。いつ見ても」
「そう?」
「他のページを見ればわかるよ」
カタンと音を立てる椅子。隣にいる彼女の顔がよく見えるような位置で座ってみた。
机に頬杖をつけば、まるで学生時代に戻ったよう。
違うのは服装と立場と…あぁ、意外と色々違うかもしれないな。
「ふふっ。本当だ。みんなよりはびっしりかも」
「だろう?」
「うん」
窓から差し込む夕陽に照らされて、綺麗な横顔がさらに綺麗に見えるのは、決してこの感情だけのせいではないんだろう。
こういう表情を見ると、本当に離したくなくなるんだ。
妹としても、…一人の女の人としても。
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