まだ、小さくスノードームから音楽が流れている。
それを聴きながら、手紙を開けてみた。
『Dear. Harris』
その丸文字が、今は瞬ではなく僕に向けられているのだと思ったら、
なんとなく心があったかくなった。
おかしいな、外は暑いくらいなのに。
『お久しぶりです。元気にしていますか?私は、少しだけ暑さにやられながら頑張っています』
「なんだよ、それ」
時々、悪態をつきながら読み進める。
それは、自分なりの気持ちの整理のつけ方だ。
『ハリス君にも、送るね。私の手作りだから不恰好なスノードームになっちゃったけれど』
『私、ハリス君のヴァイオリン、好きだから。また、聴けたらいいなぁって思って。ヴァイオリンのスノードームにしてみました』
『真夏にスノードームって、やっぱり変かな?でも、少しは涼しくなるかもよ?気持ちの問題ってやつ』
『では、また…会える日を楽しみにしています』
「“奏より”、か」
どんな顔をしてこの手紙を書いていたか、なんとなくわかってしまう自分がいる。
いかに彼女のことを見ていたか、それがわかってなんとなく悔しかった。
彼女は、奏は瞬の彼女なのに。
「…もう1枚」
ピッタリと重なった手紙がもう1枚あったことに気づく。
ガサッと音を立てて出てきたその手紙は…英文だった。
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