「…はい。ハリス」
「…うん?」
「こっちのは、ハリスのだって」
「僕の…?」
「うん」

 そう言って瞬は箱からもう一つのスノードームを取り出した。
 ぱぁっと広がるその粉雪は少しだけ中身を隠す。

「…ヴァイオリン?」
「だね」

 中に入っていたのは少し歪な形をしたヴァイオリンだった。
 そういえば、瞬の持っているスノードームの中身も少しだけ歪な形をしているように見える。

「それと」
「何?まだ何かあるの?」
「奏ちゃんから、手紙」
「…僕宛?」
「そう」

 そしてまた差し出してきたのは真っ青な封筒だった。
 表書きは「Dear. Harris」。あぁ、間違いなく僕宛の手紙だ。

 それを手に取り見ている僕を少しだけ見てから、自分のスノードームと手紙に目線を移す瞬。

「瞬」
「何?」
「妬ける?」
「…別に?」
「そ」

 目線をこちらには向けずに素気なく返って来た言葉。
 あぁ、そっか。そういうことね。
 わかるよ、君のことだから。

「ありがとう」
「いえ」
「…うん?これ、オルゴール?」
「あ、本当だ」

 カチリと音を鳴らせば小さく流れた音楽。
 それは自分のものも、瞬のものも…同じ音楽だった。

「なんて曲だろう?」
「さぁ、僕も聴いたことないな。瞬も?」
「うん。手紙に、書いてあるかな?」

 そう言ってカサリと音を立てて、瞬は手紙を広げる。
 自分も開けようと思ったけれど、なんとなく恥ずかしくなって自室に戻った。



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