その日届いたのは、エアメールではなく…小包だった。
ある夏の日のことである。
「何、それ。奏から?」
「うん、そう…みたい」
そう言ったのは瞬。
何気なく言ったその言葉にも、どこかズキリと胸が痛んだのは、
どこかでまだ…引き摺っているからなんだろう。
瞬はそんな僕に気づかない。
瞬らしくマイペースに、でもどこか丁寧にその包みを開けていた。
「あ。これ」
「スノーグローブ?」
「日本では…スノードームとも呼ばれてたかな」
「ふぅん。で、なんだって?」
素気なく言ってみた。
そんな様子に瞬は気づいたのか気づかなかったのか。
きっと彼のことだ、少しの変化も気づいているんだろうとは思う。
「このスノードーム、奏ちゃんの手作りなんだって」
そう言って瞬は少し小さめなスノードームを手に取る。
水の中に入った溶けない粉雪がドームいっぱいに舞い上がり落ちて行く。
中には寄り添う恋人。
それは、きっと奏と…瞬の姿なんだろう。
「スノードーム美術館って所に行ったら作りたくなったんだって」
「へぇ…」
窓から差し込む明かりに照らしながら、季節外れの粉雪を眺めている瞬は実に幸せそうな顔をしていた。
それが、どこか羨ましくて仕方なくて、思わず僕は目を伏せる。
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