ある日のこと。学校からの帰り道。その日は久しぶりの雨の日だった。
 だけれど、僕は歩いて帰っていた。雨の景色を見るのも好きだから。
 と、のんびり歩いていたら、急に声を掛けられた。

「瞬くん」

 その声は…僕の好きな声。
 振り返るとにこにこ笑顔の奏お姉ちゃんが立っていた。

「お姉ちゃんも今帰りなんだね」
「そうなの!偶然だね。ね、一緒に帰ろう」

 そういうと笑顔のまま、僕の隣に来る。

 すごく、嬉しい偶然。

 二人になった帰り道。色々な話をしながら帰った。どちらかと言うと…お姉ちゃんの話を聞いている方が多かったけれど。
 でも、そんな感じが僕は好きだった。
 だって、とても楽しそうな奏お姉ちゃんの顔が見れるから。

「あ!そういえば」
「お姉ちゃん?どうしたの?」

 お姉ちゃんが急に何か思い付いたように声をあげる。

「この先の公園だよね?」
「公園?」
「ほら、この間見せてくれた絵の公園」
「あぁ。うん、そうだよ」
「ねぇ、瞬くん。こんな天気でも良ければ、案内してよ」

 お姉ちゃんはにこっと笑いながら僕に言う。
 僕の頬が自然に緩むのが自分でもわかった。

 …ほら、ね?言った通りでしょう?

「うん。いいよ。雨の日の公園も綺麗なんだ」
「じゃあ、決まり!今日はお姉ちゃんと寄り道だ」

 奏お姉ちゃんは嬉しそうに言う。
 僕もすごく嬉しかった。だって、二人きりで寄り道だから。

 雨で濡れちゃうから、手を引くことが出来ないのは残念だけれど。
 それは…また今度。ね。

 二人きりの帰り道。
 誰にも邪魔させないよ?
 今からは、僕だけのお姉ちゃん…。


―Fin―


→あとがき


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