手を伸ばせば、変わらずそこにある温度。
自分の腕の中ですやすやと眠るその顔を見て笑顔をひとつ。
触れればするりと抜けるその髪の一つ一つにキスをしたいくらい愛しい。
「…」
溢れる小さな小さな寝息。
今夜は静かすぎるほどの夜だから、君のすべてが聞こえるよ。
頬を寄せて感じる吐息。
身体を寄せて感じる鼓動。
全てを包めば感じる温もりは、全て君のもので…
「…俺の…もの」
誰にも、君にさえも聞こえないほどの声で囁いて、ふっと洩らす穏やかな笑みは、きっと君と出会ってから知ったもの。
君は俺に色々なものを教えてくれて、気づかせてくれた。
でも、ねぇ?
俺は何か、君にあげられるものがあったかな?
そっとつけた額と額。
小さな子どもの熱を測るようにしたそれは、なんだか二人の秘密の合図のようで。
「…あ、笑った」
眠っている君は、何を感じたの?何を見たの?
夢の中でも、俺は隣にいる?
窓の外には久しぶりに顔を出した月。
少し開けた窓から入ってきた風がカーテンを揺らしていた。
暑くなったと思ったのに、まだ風は涼しいんだな。
「…おやすみ…」
大好きな大好きな、俺だけのお姫様。
そっと接吻けして、瞳を閉じる。
夢の中でも、君に会えますようにと。
―Fin―
→あとがき
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