息を切らして、走ってる。
 一体いつぶりなんだろう。こんなに息を切らして走ってるのなんて。
 だけれど、急がなくちゃって。

 そう、思うんだ。

「お姉ちゃん…!」
「瞬くん?」

 いつもは出さないようなそんな声。
 だからか、君は少しだけ驚いた顔で僕を見たんだ。

「ほら…これ…」

 僕の手には…腕には、たくさんの薔薇の花。
 薔薇の花束。
 色とりどり、大きさも様々。
 ありったけを持ってきた。

「…すごい!綺麗…」

 少しだけ涙の溜まったその瞳で覗き込む花束。

 ほら、顔も綻んだ。

「これ、あげるよ」
「え?」
「バラ園から取って来たものだけど」
「でも…」
「きっと、お姉ちゃんによく似合う」

 そう言うと、ふわりと笑ったんだ。
 少しだけ薔薇に似た色を頬に浮かべて。

 君には、その顔が…一番似合うよ。

「ねぇ、だから」
「何?」
「もう、一人で泣かないでよ」

 薔薇の花束を受け取った君を包むんだ。
 花束と一緒に。

 その背に手を回して。

「瞬…くん」
「僕が、そばにいる」

 きっときっと、

 叶えてあげる。

 君が願うこと、その全てを。

 だって、僕は

 君が笑えば、それで幸せなんだから。


―Fin―

→あとがき


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