西日のかかるグラウンドを見下ろして、ゆっくりと生徒会室の机上を片付けた。
休み時間に聞いた雅弥の言葉が、しっかりと脳裏にこびりついていて。今日は授業も話し合いも半分近く上の空だった。
…今までの僕は、こんなだったかな…。
家族以外で一番近くに感じていた友人がライバルだとは。
実際、ありえる話ではあったのだけれど…本当にそんなことが起こるだなんて思いもしていなかった。
それくらい、意外。
巧は、普通に良い奴だと思う。
サッカー部に所属していながらも、生徒会の仕事も滅多に穴を空けないし。成績だって、悪くない。それでいて、あの容姿にあの性格。
だからこそ、周りの女子からの人気もすごいわけだ。
まぁ…こんなこと絶対に本人には言わないけれどね。
そしてまたグラウンドに視線を落とすと、サッカー部の練習風景が目に付いた。
少しだけ遠かったけれど、雅弥の姿はすぐにわかる。それと…巧も。
グラウンドの隅では女子たちがその様子を見ていた。
そして、今は見つけたくなかったその姿も見つけてしまう。
その集団から少しだけ離れた場所に立っているその姿。
遠くても…わかるよ。君だからさ。
時々、雅弥と一緒に帰ることは知っていた。もしかしたら、今日も誘われていたのかもしれない。
だけれど。
ねぇ、君は今…誰を見ている?
どのみち、僕の胸が締め付けられることに違いはなかった。
だって。当然ながら、奏の視線の先に僕はいなかったのだから。
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