その話は、雅弥から聞いた。
「巧のやつ…奏のことが好きなんだってよ」
話というよりも呟きに似た言葉だったそれは、最近の雅弥から聞く言葉の中で一番心の奥に響いてきた。
…冷や汗が出そうだったくらい。
「…ふぅん」
「あれ、お前は興味ねぇんだ?」
教室の一番廊下側の席。窓越しに話しかけてくる雅弥の言葉は挑発的だった。
「全くないわけじゃないけれどね。巧がね…ちょっと意外」
「それがよ、昨日聞いた話でさ」
なんとなく…雅弥が彼女のことを気にしているのはわかっていた。それは多分雅弥も一緒で。だからこそ、こういう話をしてきたんだろう。
僕が、彼女を好きだってわかってて言ってきてるのか。
僕は奏と同じクラスで、雅弥は巧と同じクラスだった。まぁ、隣同士だからすぐに会える距離なわけだけれど。
何やらブツブツと話を続けている雅弥の話を頭のどこか隅で聞きながら、自分の思考は違うことを考えていた。
…奏は、どう思っているんだろう。
その事を暫く考えていたけれど、すぐにやめた。
人の気持ちなんて…いくら考えたってわかりっこないから。
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