それはバレンタインデーのことだった。

 前日の夜に起こったことも充分過ぎるくらい衝撃的だったんだけれど…当日はもっと。

 前日に作ったチョコレートを持って、いざ雅季くんの部屋に向かったあの時。
 これでもかってくらい緊張していて、心臓がおかしくなっちゃうんじゃないかっていうくらいドキドキしてた。
 ノックをするとすぐに出てきた雅季くんは「やっぱり奏だった」って言うと、ふわりと笑い掛けてくれて。

 その時点で、私の顔は真っ赤だったんだ。

*+*+*+*+*+*+*

「ねぇ?今、何の本読んでたの?」
「奏に言ってもわかる?」
「…微妙かも」
「だろうね。でも、面白いよ。読んでみる?」
「なんて本?」
「サン=テグジュペリの夜間飛行」
「…やっぱり知らない本だった」
「ふふっ。やっぱり。どうする?」
「読んでみたい!」

 そんな会話が当たり前になってきた今日この頃。
 それでも雅季くんのこういうところは全然変わらなくて。

 そうだな、変わったところと言えば…

「奏」
「何?雅季くん」

 チュッ

「!?」
「奏って本当に隙だらけだよね」

 そう言うとすごく意地悪な顔をして笑う。

 そう。
 これ。

 実は、雅季くんは私の…彼氏になったのだ。


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