「ほら、奏ちゃん、もうすぐ落ちるよー」
「やだー!怖い!無理!」

 そこは本当に、夢と魔法の王国だった。

 時間なんて忘れてしまうくらい。
 とにかく何度も、くしゃくしゃになるまでガイドマップを見ながら回った。

 スプラッシュマウンテンでは思い切り水を被っちゃったし、アリスのティーパーティーではぐるぐるとテーブルを回されたし。もちろん、スペースマウンテン、ビッグサンダーマウンテンもしっかり制覇。
 グランドサーキットウェイでは私が運転していつもと逆になって。
 バズ・ライトイヤーのアストロブラスターでは競ったら、なんと私が勝っちゃって。悔しがる裕次お兄ちゃんがなんだかすごく可愛かった。
 トゥーンタウンでは色々なキャラクターたちと写真を撮ったし、ミッキーの家に行ってミッキーにハグされながら撮ったりもした。
 その時、裕次お兄ちゃんがミッキーにヤキモチ妬いたもんだから…キャストさんに笑われちゃったりして。

 とにかく楽しくて仕方なかった。

「やっぱりプーさんは可愛いなぁ」

 順番待ちの列の中。私はハニーハントの象徴でもある、プーさんの絵本になっている壁などを見ながら呟いた。

「奏ちゃんの方が断然可愛いもん」

 そう言ったのは隣でポップコーンを食べている裕次お兄ちゃん。
 そのポップコーンはハニーハントに並ぶ前に買ったはちみつ味のもので、どうやら裕次お兄ちゃんのお気に入りになったみたい。

「うぅん。なんか俺、プーさんの気持ちわかるなぁ。美味しいもん、はちみつ」
「裕次お兄ちゃん。それははちみつ味のポップコーンだよ」
「そ、そうだけど!だって、だって…美味しいんだもん!」

 耐えることのない笑顔と会話。そんな私たちは、周りからはどんな風に見えてるんだろう。

「そうだ。ねぇ、奏ちゃん」
「何?」
「ハニーハントの後さ、ちょっと遠いけれどアドベンチャーランド行こう?」
「え?あ、うん。良いけれど。どうしたの?」
「魅惑のチキルーム行こう」

 にっこりと笑った裕次お兄ちゃん。
 『魅惑のチキルーム』。そこは私の大好きなスティッチの居るアトラクションだった。

「行く!」

 私はそんな裕次お兄ちゃんに笑顔で答えた。


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